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やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中|購入者用ボイスドラマ

「プレゼント交換作戦」

ハディス、帝城の自室に帰る

ハディス 「はーやっとジルへのプレゼント決まったけど、どう渡そう。かっこよく『紫水晶。君の唇を予約したい』……は、恥ずかしいな!? じゃあ『目を閉じて、つけてあげる』とか……そ、それも恥ずかしい! あ、あとで考えよう。これは隠して、と」
【プレゼントを隠す・自室の扉を開く】
ハディス 「ただいまジル、すぐ夕飯の支度……あれっいない。あージルはまた、上着出しっぱなしにして。ちゃんとたたまなきゃしわに」
【上着を取ろうとして、指輪が落ちる】
ハディス 「指輪……? と、手紙。ジルの字だ。『素敵な婚約指輪を有り難うございました』………!?」
「……っは! ひどい夢を見……てないな、現実だ! お、贈り主は僕じゃないぞ。まさか、ジルが、浮気……!? い、いったいどこのどいつだ略奪愛なんてしようとする輩は!? ちっ宛先も住所もない!」
「そうだラーヴェ! 今こそ竜神の力で相手を呪い殺……本日の営業は終了しました? ふざけるな、おい! 役立たず竜神め、かくなる上は……!」
「いや落ち着け、早とちりダメ、絶対。まずジルに話を聞いて……こういうとき責めるのはだめって本にあったよね。明るく僕の気持ちが届くように、まずおいしい夕飯とデザートも用意しよう!」
【夕飯の支度を始める】
ハディス 「まさかだよね。ジルが僕を捨てるなんて、あるわけないよね!? も、もし万が一にもそんなことあったら……ジルを殺して僕も死ぬ」

ジルが(ハディスの自室に)戻ってくる

ジル 「ただいま戻りました、陛下! わー今日の夕飯、豪勢ですね、へい……か……?」
ハディス 「おかえりなさい、あなた。ご飯にする? お風呂にする? それとも僕かな」
ジル 「あ、あの、陛下……包丁何本も置いて、蝋燭立てて……なんですかこの食卓。サバトでもやってらっしゃる……?」
ハディス 「僕の今の気持ちを明るく届けたいなって! いいから、ほら決めて? ご飯? お風呂? 僕?」
ジル 「えっと……さめたらもったいないので、ご飯」
ハディス 「僕だよね。僕以外あるわけない。それとも、ジルにはご飯を作る僕より大事なものがあるの……?」
ジル 「や、やっぱり陛下にしますね!」
ハディス わあ嬉しいな! さあ座って? 僕はね、これについて話したいんだ」
【指輪を出す】
ジル 「あ! み、見つけちゃったんですか……」
ハディス 「僕に見つかって何か不都合があるの」
ジル 「え」
ハディス 「ごめんね、違うんだ……君を責める気はないんだよ。きっと僕にも悪いところがあったんだよね。君をそこまで追い詰めたのは僕だ、責任は取る」
ジル 「なんか陛下、壮大な勘違いしてないですか?」
ハディス 「してないよっ僕は冷静だ!」
ジル 「ならなんで包丁を構えるんですか! 刃物はひとに向けちゃだめです!」
ハディス いいから、正直に答えて。婚約指輪ってどういうことかな……!?」
ジル 「あ、全部ばれちゃってるんですね……。ならしょうがないです。実は」
ハディス 「アーーーーーーーーーーーーやっぱり聞きたくない!」
ジル 「へ、陛下?」
ハディス 「聞きたくない聞きたくない聞きたくなぁい! 無理。この僕がそんなこと受け止められるわけないだろう!? き、君が浮気なんてそんな……っ!」
ジル 「う、浮気? 陛下、落ち着いて。何か勘違いしてます、絶対に」
ハディス 「何が勘違い!? 何を言い訳するつもり!? どうしてなんだジル、僕はこんなに君を愛してるのに! ――ふ、ふふ……取り乱してごめん、ジルが僕を裏切るわけないよね。ちょっとした行き違いで、つまり浮気相手を殺せばいいだけだよね……?」
ジル 「よく見てください、サイズが男物です。はい、手を出して陛下」
ハディス 「浮気野郎にそうしたら男は黙るって教えてもらったのか!? 言っておくけど僕は君を譲らないよ。ああそうさ、僕は君の幸せを願って引き下がる大人の男になんかなれない。僕は所詮、ただの十九歳児だ!!」
【ジルがハディスに指輪をつける】
ジル 「よかった。サイズ、ぴったりですね」
ハディス 「へ」
ジル 「わたしから、陛下にプレゼントです」
ハディス 「……へ?」
ジル 「陛下の婚約指輪ですよ。ちゃんとわたしの婚約者だって首輪」
ハディス 「首輪!?」
ジル あっ指輪です間違えました。とにかく、野良だと思われたら困るのでつけてください。鎖もありますよ。水仕事ではずすときはなくさないように首にかけてくださいね」
ハディス 「余計に首輪感が増したような」
ジル 「大事にしてください。わたし、山賊退治して稼いで買ったんですから。オーダーメイドって高いんですね」
ハディス (じゃあ、あの手紙は、職人さんへのお礼の手紙……?)
ジル 「陛下、嬉しくないですか?」
ハディス 「う、嬉しいよ! 嬉しい。ありがとうジル。大事にする。指輪も、君のことも。でも………………恥ずかしくて死ぬ」
ジル 「でしょうね。まったく、十九歳児ってなんですか?」
ハディス 「言わないで! さっきまでの全部忘れてお願い……!」
ジル 「もう、しょうがないですね」
ハディス 「ご、ごめん……でも 君を誰にも渡したくなくて」
ジル 「わたしだって陛下を誰にも渡しませんよ」
【ハディスが息を止めて倒れる】
ハディス 「あ……お花畑……」
ジル 「それ天国です、戻ってきてください陛下。――ところで、陛下のシャツに口紅ついてません?」
ハディス 「あ、ほんとだ。大丈夫だよ、クレンジングオイル使えば落ちるから」
ジル 「口紅つけたシャツが見つかって妻に言うことはそれだけですか」
【ジルが拳を鳴らす】
ハディス 「えっ? ああ、そういう――い、いや違うジル! これは」
ジル 「その女性の住所と名前を教えてください。それとも男性ですか」
ハディス 「あらぬ方向に誤解しないで! そうじゃなくて、……じ、実は僕も君へのプレゼントを用意してて、たぶんそのときに」
ジル 「わたしと同じことを言えば見逃してもらえるとでも思ったか十九歳児!」
【ジルが襲いかかりガタガタ喧嘩する】
ハディス 「あれっ包丁いつの間に取られた!? 待って待ってジル、ほらこれ! 君へのプレゼント! 口紅!」
【ハディスがジルにプレゼントを渡す】
ジル 「……。わたし宛ですか? ほんとに?」
ハディス 「ほんとだよ! 僕は浮気なんてしない」
ジル 「でも、陛下だし……適当にこの場を誤魔化してるだけじゃなくて?」
ハディス 「君の中で僕はどんな男になってるの!?」
ジル 「それに、わたしに口紅って、まだ早いですよ。やっぱりあやしいです」
ハディス 「……すぐ大人になるくせに」
ジル 「はい?」
ハディス 「ううん。……確かに早いかもしれないけど、君が大きくなったら返してもらえるでしょ。だから今、贈りたいんだ。だめかな?」
ジル 「だ、だめではないですけど、返す……? 陛下に、口紅を?」
ハディス 「うん。今から予約しておきたいんだ」
ジル 「……よくわからないけど、わかりました。有り難うございます。けど、どうやって返すんですか、口紅なんて」
ハディス 「こうやって」
【ハディスがジルの頬に口づける】
ジル 「ひゃ!?」
ハディス 「なんなら、今からでもいいよ」
ジル 「だめです! お、大きくなってからってさっき言いました!」
ハディス 「残念。でも、信じてくれた? 浮気じゃないって」
ジル 「そ、それは……はい……」
ハディス 「じゃあ口紅も、僕だけの先約でいい?」
ジル 「……お、大人になったら、いいですよ? シャツにつけてあげます」
ハディス 「へえ? いいね、色っぽくて」
ジル 「もう陛下、さっきからえっちなこと考えてるでしょう!」
ハディス 「そうだよ? だから早く大人になってね、僕のお嫁さん」
ジル 「~~っ陛下の馬鹿! わたしっお風呂入ってきますから!」
【ジルが走って部屋から出ていく】
ハディス 「いってらっしゃーい。……逃がしてあげるよ、今はね」
※3巻購入者特典ボイスドラマをサイト用に直したものです

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