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No.17

『この令嬢がヤバイフェア』自主没SS




廃城のテラスで二人きりのお茶会中、十回目の求婚をしたら魔王が言った。

「女性から求婚するのは、令嬢として失格ではないのか?」

 頬杖を突いたクロードがアイリーンの手作りクッキーを手に取る様子はない。何も盛っていないとわざわざ申告するのもつまらないので、アイリーンは何も言わずまず紅茶を飲んだ。

「クロード様。貴族の令嬢は普段から心がけていることがたくさんあります。たとえば、食器に口紅をつけない」

 紅茶のカップを見せる。口をつける前に軽く拭き取り、口紅を残さないのが礼儀だ。

「ダンスに気の利いた会話、相手と場に合わせた化粧。でもそれらはすべて意中の男性をしとめるための武器です。令嬢達はその目的を見失っていけません」

 目線を上げたクロードに、狩人の瞳で薄く微笑み返す。

「今日の口紅の色が気になります?」
「何故そう思う?」
「ずっと見てらっしゃいますわ。どんな色がお好き? 言ってくだされば変えますわ」
「僕を愛してもいないくせに?」

 それを気にしだしたら、落ちる日も近い。

「ええ。クロード様のお好みの色に」

 クロードがふと身を乗り出し、親指でアイリーンの唇をゆっくりなぞった。

「では、淡いピンクの口紅で」

 そしてクッキーを一枚取り、立ち上がる。

「楽しみにしている。また明日」
「――ええ、また明日」

 でも、明日の口紅の色は赤だ。

(意中の男性を落とす前に落とされては駄目)

 それが、男性には言えない令嬢の本当の心得。
 言うとおりに口紅の色を変えて期待するのは言語道断。同じ失敗はしない。
 あなたを愛に跪かせるその日まで、駆け引きは続くのだ。

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#悪ラス
2018年プライベッター初出(たぶん)
フェア用に書いたものの、ネタにマジレスしちゃったみたいな恥ずかしさに「ちがうぅぅ」って頭をかきむしって自主没にしたものです。

小説


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