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今年も周年フェアで過去の特典SSがプリントできるようになってます~~!

去年との差分(今年追加分)のチェックはこちら で。


新グッズはないはずです。復刻はあるのかな、どうかな。

去年アニメで散々色んなグッズ作ってもらってみんなにもお金使わせただろうから、今年は断りました。
今年は新刊も合わせられなかったんで五歩ほど下がってようと思って……来年は頑張って目立つぞ!
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またお知らせできることあると思うので、その都度参上します。
原稿抱えてると書くこと以外できない人間になります、すまない……。

#やり竜 #悪ラス

お知らせ

ついうっかり「いきなりの円高」とかそういう単語をつぶやいたばっかりに株だのなんだのの妙なリプ(スパム?)がつくようになったXですが、完全にリプ制限してたらやっとこなくなりました。ヤッタネ!!
ちなみに関税騒ぎで私の積み立てNISAはまだ一部マイナスのままです。もうちょっとでプラマイ0にまで戻る頑張れ。最悪、マイナスじゃなければいいんだよ私は。130円台まで円高いくかと思ったけれど結局円安に戻ったので、また150までいくのかな~でも関税猶予が3ヶ月(7月)でしたっけ? 今でもマイナスのままの銘柄はプラスに転じたあたりで積み立てやめて、その分別の銘柄に突っ込んだ方がいいかもしれない。
自分の金を突っ込まないと経済に尻込みしたまま興味を持たないのでそういう意味でNISAやってます。人は自分の金がかかると真剣になれる。

ラーヴェ帝国はたぶん管理通貨制度だと思ってるので、つまりは通貨が発行できる機関(銀行)があるということになりますね。
別に金本位制度でもいいんですが、そもそも金をそんなに頑張って掘ってるのか?とかそういう……何よりラーヴェ様は金本位制度とか「は?」とか言いそうで怖い。自分の作った国に自国通貨発行権がないとかキレそう、ラーヴェ様。
クレイトスと通貨単位、違うのかどうかも気になりますね。気になりますねじゃないよ私が決めるんだよ知ってた? すまない自分の知識に自信がない。
間違いなくアルカは通貨偽造をしているってことだけはわかる。

エルメイア皇国は意外と金本位制度な気がする。たくさんの国がある大陸の一国なので金が掘れる鉱山とかふつーにありそうで……為替相場とかもちゃんとありそう。アイザックが株で儲けてそう。敵対的買収してそう。
悪ラスは最後たくさんの国出てきたからね。アイザックが管理通貨制度にしようぜ!!とか言い出して、シャルルの時代とかでそうなるのかもしれません。


#やり竜 #悪ラス

小ネタ

Wavebox、感想くださってる皆様、有り難うございます。返信不要を基本にしておりますが小躍りしてます!
特に悪ラス10・11巻の感想、大変嬉しかったです。
以下ちょっとネタバレも含むのでご注意を。


シャルルのお相手はエステラで確定です。
アシュメイルはエステラの弟くんが跡継ぎになります。
アリアはハウゼル女王国を建て直します。
クレアだけははっきりと決めてませんがどうするんでしょうね。意外と寒さ厳しい国の異形の王子様に惹かれたりして、クロードに頭を抱えさせるかもしれません。
私としてはアイザックのとこのお子さんがどうしてるのか気になったりしてます。皇帝夫婦に仕えてる親二人に反発して、新大陸発見の冒険に出たりしてそう。

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悪ラスは私の乙女ゲームプレイの経験と知識めいっぱい詰め込んだなぁ。
ちなみに10・11巻のゲーム会社メタネタは、自分が好きだった作品(ゲーム・アニメ・漫画小説諸々含む)にあとから制作側に「あんなの作りたくなかった」とか泥ぶっかけられて全否定されたりした苦い思い出がネタになってます★

#悪ラス

小ネタ

【リングフィットをやる魔王夫妻】



「竜帝夫妻に負けませんわよ、クロード様!」
「ジル嬢がいる時点であちらの圧勝だろう」
「あら、クロード様がリングコンを持った時点でこちらの勝ちです」
「は?」
「さらに運動用のぴちぴちな衣装を着せたら完勝ですわ、おほほほ」
「勝敗の基準がおかしい」


「では早速ゲームを開始…」
「待て。その前に君の服を買いに行こう」
「え? わたくしは別にこれで」
「だめだ。ぴちぴちのやつだ」
「真顔で言いましたわね。でも早くプレイしないと出遅れてしまいます」
「あとはスポーツ用ドリンクも必要だ。準備は大切だろう」
「クロード様、本当に形から入るのがお好きですわね……」


「だいぶ遅れをとった気がしますが始めましょう!」
「大丈夫だ、どうせあちらはジル嬢が色々やって進んでない」
「まずストレッチですわ!」
「怪我の防止だな」
「このゲーム、ストレッチも入ってるんですって。本格的ですわね」
「だがこれだけでは足りない。ふたりでストレッチを加えよう」
「クロード様、実はやる気ありませんわね?」
「入念にストレッチしたいだけだ」


「や、やっとプレイ画面…ここから追い上げます!」
「無理では?」
「誰のせいだと!?」
「だが僕は敵情視察用に竜帝のプレイ動画配信を見つけたぞ」
「あら。あちらはどこまで進…」
『陛下かっこいい!』『えっそうかな~』
「「……」」
「頑張りましょうクロード様。いらっとしました」
「同感だ」


「け、結構きついんですけれども…っ」
「僕に合わせて無茶をするからだ。水を飲んで」
「は、はい。…クロード様は汗ひとつかきませんわね」
「いや疲れている」
「その顔で……?」
「顔と関係ないだろう」
「こうなったらクロード様が汗を滴らせるまで頑張ります!」
「なら僕は君が子鹿のように立てなくなるまで頑張ろう」
「またよからぬことをたくらんでますわね!?」
「どちらがだ」



「このゲームの魔物達は可愛いな」
「そ、そうです、わね…回復されたり馬鹿にされたりしますが…あとステッ●とかいう魔物の顔が憎たらしい…!」
「しかしドラ●という奴は、こんなに魔物達が倒されているのに助けにこないとは魔王失格だ」
「えっ魔王なんですの、ドラ●?」
「違うのか」
「違う…と思いますけれど」
「そうか…なら僕がクリアして魔王にならねば」
「それも違いません!?」


「僕のプランクが…間違っている…と…?」
「ク、クロード様! 落ち着いて、これは感知的な問題が」
「そんな馬鹿な…僕が感知されない…」
「いえ、完璧なプランクでした! 間違っているのはコントローラーのほうです!」
「…そうか?」
「そうです。ほらわたくしも感知されな――あっ」
「…されたな、一発で」
「こ、これは運よくで」
「僕はプランク魔王になる。プランクを完璧にできるようになるまでやり続ける」
「バランス良く運動しましょう!?」


「無事か、アイリーン」
「だ、大丈夫ですわこれしきの筋肉痛ッ…!」
「僕に負荷を合わせて無茶をするから…何かほしいものは? コンビニで買ってこよう」
「クロード様がコンビニ!?」
「僕だってコンビニくらいは行ける」
「本気で仰ってますの…!?」
「…そういうことを言うなら、君をお姫様抱っこで連れて行く」
「それはちょっ…クロード様待って、わたくしが悪かったですから!」


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#悪ラス
2021年Twitter初出

小説

『ポンパ巻き貝ハーフアップ梅雨の戦い・後編』



 寝室の扉が開く音に咳払いをして、アイリーンは振り向く。

「おかえりなさいませ、クロードさ……」

 咄嗟に口元を両手でふさいで噴き出さなかった自分をほめたい。
 だがそのまま震えてしまうのは押さえられなかった。
 昼間、アイリーンが巻き貝にした頭にさらに鳥籠を盛って現れたときから覚悟はできていた――クロードの髪型がそう、庭になるくらいは。
 だが、現実は常に厳しい。

「な、なん、ですの、その髪型」
「宮殿だそうだ」

 では、横髪を持ちあげて上でくくり、花で飾っているのは門。その奥、鳥籠をうまく柱にして、髪や飾りを盛って作られているのは宮殿か。

「お、重たくありませんか」
「重たい」
「湯浴みは」
「これからだ――で、はずしていいだろうか?」

 クロードが頭の上を指でさして、首をかしげる。それだけでもうだめだった。寝台に突っ伏したアイリーンは全身を震わせて笑う。

「機嫌が直ったなら何よりだ」
「む、むしろクロード様、よく一日耐えて……ああ、お待ちくださいな。無理に引っ張ったら髪が傷みます」

 寝台に腰かけたクロードのうしろに回り、アイリーンはそっとクロードの髪を留めているピンを抜いていく。
 はらりと一房、黒い艶やかな髪が落ちた。

「……」

 しばっている髪をほどくとまたさらりと髪が流れ落ちる。

「……」

 花飾りを引き抜くと、さらっと前に髪が流れていった。
 だんだん半眼になってきたアイリーンは無言で最後、鳥籠を取りあげた。
 さらりと背中にしなやかに黒髪が落ちる。

「ありがとう。……アイリーン?」
「どうして癖のひとつもついてませんの!?」

 叫んだアイリーンはクロードのうしろ髪を握る。だがさらさらだし、つやつやしているし、あれだけ塗りたくった薬も何もなかったかのように輝いている。

「許せませんわ、どういうことですか!?」
「そんなことを言われてもな」
「何が違うんです!? 実は形状記憶合金!? それとも髪の手入れ!? 何を使っておられましたクロード様!?」
「特に変わったことはしていないと思うが……」
「ないなんて言わないでください! 絶対! 何かあります! あると言ってください……!」

 両手で顔を覆って懇願するアイリーンに少し考えこんだクロードは、自分の髪を見て、それからちょっと首をかしげる。

「じゃあ、確かめてみたらどうだ」
「何をです!? クロード様の天賦の才能をですか!」
「湯浴みを」

 にっこりと笑われて、アイリーンはそのまま固まった。





「――で、今日はご機嫌なんですね? 晴れるくらいには」
「そうだな。あんなわけのわからない髪型をしただけの対価は得たからな、湯船で」

 朝の珈琲を飲みながら、ゆっくり従者と語り合う。ちなみに愛らしい妻は未だ寝室だ。多分、昼まで起き上がれないだろう。

「本当に僕の妻は、いつも努力を斜め上に走らせるから可愛い」
「では、今日は私めが支度してもよろしいので?」
「ああ。寝室からこちらを恨みがましくのぞき見しているアイリーンには気づかないふりをしてくれ」
「あ、あれやっぱりのぞいてらっしゃるんですね……どうしてまた」 
「夜会でお前が僕の髪をいじると毛先が曲がるだろう。何をしているのかと」
「なるほど」

 櫛やら何やら取り出してきたキースは眼鏡を押し上げて、にっこり笑った。

「それは秘密ですね」
「だろうな」
 

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#悪ラス
2020年Twitter初出

小説

『ポンパ巻き貝ハーフアップ梅雨の戦い・前編』



 魔王様のご機嫌に関係なく、雨が降る季節になった。
 鏡台の前に櫛を置いて、アイリーンは嘆息する。するとソファに座り、執務前の休憩、食後の珈琲を飲んでいたクロードがまばたいた。

「どうした、アイリーン。何か気鬱なことでも?」
「いえ、髪が……こう、なんていえばよろしいのか……ぼわっとしてしまうのが気になって気になって」

 レイチェルたち侍女達とも毎朝悪戦苦闘するのだが、どうしても今時期は湿気で髪が膨らみがちだ。

「結んでしまえばいいんですけれども……」

 髪先をいじりながら、アイリーンは嘆息する。立ちあがったクロードがわざわざ背後から小首を傾げて覗きこんできた。さらりと湿気も何も関係ない、艶やかな髪が目の前に流れる。

「髪型のひとつやふたつ気にせずとも、君はいつも可愛い」

 甘くささやく夫に、アイリーンは笑顔を返す。

「クロード様に言われると腹が立つので控えていただけますか」
「……手厳しいな」
「こんなつやつやの髪をなさって、そんなことをおっしゃるからです。どれだけわたくしが苦労してると思いますの」

 ぐいぐいと遠慮なくクロードの髪をひっぱると、クロードが顔をしかめた。

「わかった、配慮に欠ける発言だった」
「認められても腹が立ちますわね」
「どうしろと」
「どうもこうもありません」

 羨んだところでクロードの雨にも風にも湿気にも負けない髪が手に入るわけではない――と言おうとして、アイリーンは口をつぐむ。
 いいことを思いついた。



「……なんなんですか、我が主。その髪型」
「よくわからないが今日一日この髪型でいろと言われた」

 頭の上に巻き貝のようにねじり上げて作られた髪型が重い。ぐるぐる渦をまいた髪の間に花飾りまで散りばめられて、なんだか肩が凝る。

「髪が爆発する苦労を知れと言われた」
「なんかそれ、違いません?」
「僕もそう思うんだが、妻がご機嫌になったのでまあいいかと」

 キースが呆れて雨の降る窓の外を見る。

「今日も平和でいいですねえ」
「まったくだ」


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#悪ラス
2020年Twitter初出

小説

『魔王と竜帝でチョコを作れと言われたので』



「クロスオーバーはこの間限りじゃなかったのか」
「今度はバレンタイン企画だそうだよ。僕と君で一緒にバレンタインのチョコを作ってみてほしいってリクエストがあったらしい」

 三角巾にきっちり髪を入れてまとめ、エプロンをつけて、ロリコンもといハディスが答える。

「君は作ったことないだろう、チョコ。だから僕が君に作り方を教えるよ」

 従者に三角巾とエプロンをつけられ髪もひとまとめにさせられて、突然厨房に放りこまれたクロードは、眉をひそめた。

「君が、僕に?」
「大丈夫だ、そんな顔しなくても。ジルが僕に頑張ってって言ってくれたから、ちゃんと食べられるものを教えるよ。それに、僕、嬉しいんだ」
「嬉しい?」
「こんなふうに誰かと一緒に作るなんて、友達みたいじゃないか」

 にこにこするハディスに、クロードは胡乱な眼差しを向ける。
 魔王の自分が言えた義理ではないが、すさまじく胡散臭い。

(バアルと作るほうがまだマシだ)

 とついうっかり思ってしまったのも悔しいので、そうかと頷くだけにとどめる。

「まあ、頼む。アイリーンに変なものを食べさせるわけにはいかない」
「うん、まかせてくれ。ということで、君の材料はこれ」

 そっとハディスが床から木箱を取り出した。中から出てきたのは包装されたチョコレートだった。板チョコだ。
 焦げ茶の包装紙部分には『m●iji』と書いてある。

「……」
「適当なサイズに折って、ボウルに入れて、違うボウルに熱湯を入れて、そこにチョコの入ったボウルを浮かせて、油と分離しないようゆっくりとかして、それをそこにある好きな型に入れて、冷蔵庫に冷やしておわり。食べられるものはできる」
「…………」
「最終手段としては、これをラッピングし直して渡せばいいと思う。じゃあ頑張って」
「実は教える気がまったくないな?」

 真顔で問うと、ふとハディスが目元を緩めた。

「僕、こういう台詞を他人に言える日がくると思ってなかったんだけど――君は顔がいいんだからチョコなんかどうでもよくない?」

 ハディスの得体の知れない笑みにつられたように、クロードの口角もあがる。

「言われ慣れた台詞だが、君に言われるとすさまじく腹が立つな。なんというか、お前が言えたことかという気分になった」
「僕には君ほどの卑猥さはないと思う」

 どこかで派手に雷が落ちたが、ハディスは気にする素振りもなくにこにこ笑ったままだ。
 この男、絶対ろくでもない。
 確信したクロードは、できるだけさわやかに問いかけた。

「ならあれか。君は可愛い系でも狙ってるのか、その全力で胡散臭い笑顔で」
「心外だな。僕はただのイケメンだよ」
「さすが、通報皇帝だの嫁だの中身が幼女だの言われているキャラは言うことが違うな」
「ははは、ヒロイン扱いされてヒーローに戻れない君からの忠告、痛み入るよ。サービスショットを求められて大変だね」
「三分クッ●ングのシルエットをつけたら笑いを取れそうな君には負ける」
「そんな話聞いてないよ、やる予定がどこに!?」
「そして最終的には必ず君も全裸にさせられるんだ……! 僕なんてコミカライズでも全裸になったんだぞ!」
「――この話、やめないか?」

 眉をひそめたハディスに、クロードも遠い目になる。

「そうだな」
「真面目な話、君はほとんど料理をしたことがないんだろう。なら、市販のチョコを湯煎して溶かすだけでも立派な手作りだ。テンパリングだって初めてだろう? 大半の女の子の手作りだって、市販のチョコを使ってアレンジしてるんだし」

 その言葉に嘘はなさそうだったので、クロードは『m●iji』と書かれた板チョコを手に取って嘆息する。

「まあ、それもそうか。じゃあ君も使うのか、これ?」
「僕はカカオから作るよ? お嫁さんにあげるんだぞ。手抜きなんてできない」
「……」
「再来年くらいは僕が栽培したカカオ豆で作ったチョコをジルにあげたい」

 それはさすがにちょっと引くと思ったが、ハディスは真剣である。
 馬鹿にするにも、ハディスは一回り近く年下なのだ。邪魔するのも大人げないと、クロードは引き下がることにした。

「わかった。頑張るといい。僕とアイリーンはもう身も心も夫婦だ。続編でまた引っかき回されるだろう君達と違って平和な未来しかない」
「なんだ君、知らないのか」
「何をだ?」
「ちょうど今、作者がとりあえずプロットとかいうのを作ろうとして」

 なんのなどと愚問は聞かずに、クロードは転移した。



 熱湯をぶっかけられてチョコ水と化したものを見せられて、アイリーンは方針転換を決意した。

「ジル様。うちのオベロン商会からバレンタイン商品は多数出ておりますわ。そこで選びましょう!」
「やっぱりそうなりますよね……」
「手作りじゃないの?なんていう男性などぶん殴って更生すべきです!」
「でも陛下は本気の手作りを持ってくるから、少しくらいわたしも……」
「なら余計、うちの商品を召し上がっていただくのはいい案ですわよ。ぜひハディス様のご意見も伺いたいですし、ハディス様の今後のお菓子作りも役立てると思いますの!」
「た、確かに。陛下も喜びそう……」
「アイリーン!!」

 突如としてわって入った夫の声に、アイリーンは目をまばたく。
 本日はバレンタイン企画。メインはヒーローふたりのチョコ作りである。その裏で、アイリーンはバレンタインくらいハディスにチョコを贈りたい、というジルの相談にのっていたのだが。

「どうなさいましたの、クロード様」
「ひょっとして陛下に何かありましたか!?」
「いや違う。違うんだが、逃げようアイリーン」
「はい?」

 首をかしげている間に横に抱きあげられた。ジルの前だ。少女のきょとんとした眼差しがいたたまれず、アイリーンは赤くなる。

「ちょっとクロード様! ジル様の前で、はしたない」
「ついうっかりクロスオーバーとか言って、現在進行形で本編があるところと関わったのが間違いだった」
「いったいなんの話ですの。落ち着いて説明してくださいな」
「作者がプロットを作ろうとしているらしい」
「逃げましょう!」

 なんのかを聞きたくないアイリーンは即断する。

「ジル様、失礼致しますわね! どうかお幸せに!」
「えっあ、はい……?」
「バレンタインのチョコは買ったほうがよろしいですわよ!」

 その忠告だけは忘れずに届ける。頷いたジルにほっとして、アイリーンは夫の転移に身を任せた。



 なんだったんだろう。首をかしげたジルの背後から、影が差す。

「陛下!」
「あっちは帰ったのか?」
「みたいです。なんだったんでしょう……?」
「続編が嫌なんじゃないか」

 そういうものか。曖昧に頷いたジルを、ハディスが片腕で抱きあげる。

「君は嫌じゃないのか?」
「嫌じゃないですよ。わたしは陛下をいっぱいしあわせにしなきゃいけないんですから!」

 胸をはったジルはたくましいお嫁さんだ。

(だがあの嫌がりよう。相当面倒なことばかりこなしてきたんだろうな……)

 そう思うと先が思いやられる。だがハディスは微笑んだ。

「じゃあ僕は頑張って君にチョコレートを作らないとな」

 ぱっと顔を輝かせたジルが成長するのにも、続編がいる。
 なのでハディスは立ち向かうしかないのだ。


(終)

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#悪ラス #やり竜
2020年プライベッター初出
バレンタイン企画クロスオーバーSS

小説

『魔王様は魔道士を待っている』



 キースとレイチェルに案内された廊下の光景に、アイリーンは頬を引きつらせた。

「……何をなさってますの」
「エレファスの帰りを待っている」

 古城にあるエレファスの私室の扉前に魔王が三角座りをしている。その両隣に、護衛のウォルトとカイルまで同じ格好で座っていた。

「今日で休暇終わりなのに、あいつまだ帰ってこないとか! そんなに嫁さんがいいか、そうか! あーうらやましい!」
「ひどい裏切りだ。僕が待ってるのに、許せない」
「クロード様はともかく、お前のはひがみだろうが、ウォルト……」
「と言いながらあなたまで座りこんでいるのはどういうことなの、カイル」
「全員、エレファスさんが戻ってこなかったらどうしようって不安なんですよ」

 キースだけが冷静にアイリーンに向けて説明する。

「こーなったら明日の朝、あいつの出勤時間までここで座って待ちましょうねクロード様!」
「そうだな。思い知らせてやる。僕がこんなに寒い思いをして廊下で待ってるんだと」
「それはさすがに……きっともうすぐ戻ってくる……」
「はーー? 今、もう夜中ですけどおぉ?? 戻ってくるわけねーだろ今頃嫁さんといちゃいちゃしてんだ、朝に戻ってくるつもりだぞ転移できるからって! あー!」

 ウォルトが投げ出した両脚をばたばたさせる。クロードが赤い瞳を細めた。

「僕より妻がいいなんて、エレファスは浮気者だ」
「あー男の友情とかはかなーーい」
「仕事だ、戻ってくる。あいつは真面目な……いや裏切りが十八番だが」
「我が主。あなたの愛する奥様が迎えにきてるんですよ、寝室で休んでください」

 嘆息と一緒にクロードの前でキースが仁王立ちした。

「アイリーン様が迎えにきたらちゃんと寝るって私めと約束しましたね?」

 ここに案内された理由がわかった。ちらとアイリーンを見たクロードは恨みがましく言う。

「僕の妻は、聖王と正妃の仲裁で、今夜はまた戻らないと聞いたが」
「ええ。ですので私めが頭をさげてお連れしたんですよ」
「お前が呼ぶときてくれるのはどういうことだ?」
「日頃の行いです。変なからみ方しないでくださいよ」
「寝室に戻ったって、またアイリーンは出て行くんだろう」
「それは主の態度次第ですよ」
「エレファスも戻ってきてくれないかもしれない」

 そこで妻である自分とエレファスが並ぶのはどういうことだ。――と思ったが、エレファスの休暇中、ずっとそわそわしていたことを思うと怒れなかった。
 エレファスは故郷のためにクロードにつかえたのだ。その意味をちゃんとクロードは理解している。故郷のためなら平気で裏切るエレファスごと、受け入れている。

「ゼームスだって、遠くに行ってしまう」

 完全に思考が落下方向にあるらしく、どんどんクロードが沈んでいく。
 キースが眉をよせて、大きな息を吐き出した。

「わかりました、わーかーりーまーしーたー! エレファスさんとゼームスさんが主を裏切るような真似をしたら、私めがきちんとレヴィ一族とミルチェッタ公国を滅ぼす手配をしますので、元気を出してくださいクロード様」
「わかった、それならいい」
「ちょっそんな約束、安易になさらないでくださいませ!」

 キースが約束してクロードが了承すると冗談にならない。
 中腰になったクロードが、アイリーンが思わずあげた声に振り向いた。

「大丈夫だ」
「なんに対しての大丈夫ですの、それは」
「君に心配をかけることはない、ということだ。女子会とやらに戻るといい。ウォルト、カイル。お前達ももう休むように」

 はぁい、と雑な返事でウォルトが立ちあがり、嘆息と一緒にカイルもそれに続く。

「古城で休まれますか、我が主。それとも皇城で?」
「そうだな……」
「アイリーン様。おわかりですよね?」

 背後からレイチェルにささやかれた。振り向かなくても、優秀な侍女の圧はここまで届く。
 わかっているとばかりに、アイリーンはわざとらしく咳払いをした。

「わ、わかっているわ。ロクサネ様はバアル様とお話したほうがいいでしょうし。あとはまかせていいわね、レイチェル?」
「もちろんです、そのように」
「クロード様。古城でお休みしましょう。わたくしも参りますわ」

 ぱちりとまばたいたクロードに、やや目線をそむけながらアイリーンは続ける。

「しかたがないから、慰めてさしあげます。……さみしがり屋なんですから、クロード様は」
「……そうか」

 ふわっとクロードが嬉しそうに笑う。
 ああ、この人は本当に表情が豊かになってきた。
 きっとアイリーンひとりだけでは成し遂げられなかったことなのだろう。でも、悔しくは思うまい。

「不思議だな。君がそばにいるとさみしくない」
「当然でしょう。わたくし、あなたの妻ですもの。エレファスと一緒にしてもらっては困りますわ」

 ふんとそっぽを向くと、クロードが甘えるように腰に手を回してきた。

「それは、失礼した。ご機嫌をとらなくてはならないな」
「えっ……」
「実はがっついていると言われて、とても傷ついていたんだ」

 慰めてくれるだろう?
 そうにっこり笑ったクロードの腕からの逃亡は、妻として許されない。




「……で? なんで休暇明けの俺の仕事が、寝室の扉をあけることなんです!?」
「お前のせいだからだよ」
「部屋の前で一夜をあかさずにすんだのはアイリの……皇后陛下の犠牲のおかげだ」
「というわけではい、頑張ってくださいねエレファスさん」

 ウォルトとカイル、とどめにキースにまで見捨てられたエレファスは、皇帝夫妻の寝室前で呆然とする。
 固くクロードの魔力で閉ざされたこの扉をあけるとか、休暇明け早々なんの嫌がらせだ。
 レイチェルまでキース達と一緒にうしろにさがって、完全に見守る体勢だ。

(ええー……いや、こっちに戻ったら三角座りのクロード様が俺の部屋の前にいるとか恐怖だけど)

 ちらと見た窓の外は快晴。魔王様は本日もご機嫌だ。昨夜は吹雪だったそうだが。 

「あー……クロード様、ただいま戻りました。エレファスです」
「……」

 扉の向こうの沈黙が、なんだか冷たい。
 嘆息したエレファスは、苦笑いで話を続ける。自分でつかえると決めた、主に。

「今日からまたこちらで暮らします。週末は、故郷に戻りますが。宜しくお願いします」
「……」
「国も、家族もいただきました。だから俺はあなたに尽くしますよ。まあキース様ほどは無理ですが!」
「名指ししないでもらえます?」
「ネイファさん……妻も、了承済みです。むしろそれでいいと。その証、というほどではないですが。妻からこれをクロード様にと渡されました」

 そっとエレファスはネイファに持たされたお土産を袋から出す。
 賄賂だ、さすが世渡り魔道士、などという単語が背後で聞こえたが、気にしない。

「試作品だそうです。手で持てる小型の写真機だそうで、アイリーン様の写真が撮れますよ」

 ばあん、と派手な音を立てて扉が開いた。成功だ。
 エレファスの背後で拍手が鳴った。

 その後、ご機嫌で小型の写真機を持って皇城をうろつきまわる皇帝の姿が散見されたエルメイア皇国は、今のところ平和である。

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#悪ラス
2020年プライベッター初出
『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』既刊重版御礼小説

小説

『悪役令嬢なので竜帝陛下が誘拐中(5)』



 あれほどのぞんだ扉がやっと開く。開扉を祝福するようなまぶしい光に、クロードは目を細めた。
 やっとだ。
『白ザラメとグラニュー糖、精製度が高いのはどっち?』とか『焼き魚を作るとき塩を振るタイミングはいつ?』とかひたすら料理に関する問題が出てきたが、クロードもジルも家事能力がてんでないことが判明しただけだった。しかも途中から『調味料にはさしすせそとあるが、せはなに?』とか出てきた。さしすせそってそもそもなんだ。世界観無視しすぎじゃないのか。ラーヴェ帝国にはあるとでもいうのか、特に後半のすせそ。
 とにもかくも当てずっぽうで見事にはずれ続け、脱ぎ続け、やっとたどり着いた妻の居場所では――。

「ということで、僕はあまり第二部に乗り気ではないんだ。絶対ひどい目にあう」
「そうですわねえ……大体この作者の傾向からいってヒーローはろくでもない目にしかあいませんもの。わたくしも散々、苦労させられて――あっ」

 優雅にお茶をしていた誘拐犯と被害者がこちらにやっと気づいた。

「ク、クロード様! ああ、きてくださったのですね……! ハディス様、何かこう、適当にお願いします」
「あ。そうだ縄だった、それとも鎖かな。どっちがいい?」
「どっちでもいいですから早く!」
「おふたりとも! 何をしてるんですかっ……いい加減にしてください! クロード様が……っクロード様がこんな、あられもない姿になったのに!」

 ※地の文省略※
 ※お好きな姿を各自ご想像ください※

「陛下、せめてマントをクロード様に貸してさしあげてください……!」
「え、でも僕は今、悪者だぞ」
「でもクロード様、わたしが脱ぐの止めてくれたんですよ!?」
「君は脱いだら駄目に決まってるだろう!? 彼が脱ぐのとわけが違う! 彼は脱ぐ、君は脱がない、僕も脱がない!」
「ご自分をちゃっかりはずしましたね」
「だって僕の標準装備はエプロンという名前の割烹着だし」
「いいんだ……アイリーン。助けにきた」

 ふらりと顔をあげたクロードに、アイリーンが頬を引きつらせた。
 言うまでもないが、クロードの不機嫌度合いは天井を突き抜けている。

「僕の可愛いアイリーン。これ以上、僕の手をわずらわせたりしないな……?」
「あ、悪役の台詞になってますわよ、クロード様」
「それがどうした。僕は魔王だ」

 薄く微笑んで手を伸ばしたクロードの前に、すらりとした剣がわってはいる。
 ロリコン、もといハディスだ。

「それは僕を倒してからにしてもらおう。でないと話がおかしくなるじゃないか、困る」
「なるほど」

 ばちっとクロードの両手に奔った魔力にジルが顔を青ざめさせる。

「ク、クロード様! 待ってください、わたしが説得しますから――陛下! クロード様はもう疲れておられます、もうやめましょう?」
「え、それだと僕に誘拐された彼女はどうなるんだ? うちに連れて帰る?」
「なんでそういう細かいところだけ真面目なんですか! 違います、もうお茶でもしたらいいじゃないですかってことで」
「……ひょっとして君は僕が魔王に負けるとでも?」

 どちらかといえば格好をつけているだけだったハディスが、ふっと表情を変えた。
 にこにこつかみどころのない得体の知れない笑顔が一枚だけはがれた気がして、クロードはまばたく。ふと見れば、そうっとアイリーンがその場から離れてシーツを用意していた。

「そんなことは言ってません。陛下が強いのは知っています」
「じゃあいいじゃないか。僕は君の言うことは聞かないぞ! あ、耳栓」
「させるか!!」

 瞬間にジルがハディスが取ろうとした耳栓を魔力で爆発させた。

「これでわたしの声が聞こえますね、陛下」

 止めに入っていたはずなのに、ジルが最初に手を出した。しかもすました顔はどちらかと言えば挑発的だ。
 だがそれを見ているロリコンもとい竜帝も、目を細めて笑っている。

「君まで僕を侮ってもらっては困るな。僕には対君用の完全無欠の兵器がある」
「わたしはそう簡単にやられませんよ。陛下こそわたしを侮らないでください」
「いつまでそう言っていられるかな。この、ケーキを前に!」

 ハディスが勝ち誇った顔で手のひらを前に出した。その上に、いちごがたくさんのったケーキが出てくる。
 宝石のように輝くそのケーキに、ぱっとジルが顔を輝かせたあとぶんぶんと首を横に振ってから、一歩さがった。

「くっ――それは卑怯です、陛下!」
「さあ、これでも僕を倒せるというならくるといい!」
「クロード様、これを。風邪をひいてしまいますわ」
「ああ、ありがとう」

 シーツをそっと肩からかけてくれたアイリーンに礼を言う頃には、クロードはすっかり飽きていた。
 それを見抜いてやってくる妻に思うところがあるが「助けにきてくださってありがとうございます」とこっそり耳打ちされるとまあいいかと思ってしまうのだから、大概自分も甘い。

「クロード様、こちらにおいでになって。すごいんですのよ、ハディス様の作られたお菓子」
「ああ……やたらクイズもそれ関係だったな……」
「ジル様が食べるのが大好きなんですって」
「今ならこの特製野菜ジュースもついてくる! 果物も入っていておいしいぞ。さあ、負けを認めるんだジル!」
「卑劣なっ……あ、そうだ陛下、薬飲みましたか!?」
「あ、飲んでない」
「だめじゃないですか! そういえばだいぶ魔力使ったでしょう、また熱を出しますよ」

 放っておいてもあっちはあっちで決着がつくだろう。

(あのロリコン、病弱設定までついてるのか)

 それはまた苦労しそうだ。
 アイリーンに新しい紅茶を注いでもらい、先にお茶会の席についたクロードは、頬杖を突く。クロードの隣の席に座ったアイリーンが、柔らかく笑った。

「お似合いですわね、あのふたり」
「そうだな。僕らほどではないがな」
「それはもちろんですわ。でも、あの方達はこれからなんでしょう。さきほどわたくしが手に入れた最新の情報によると、あちらも書籍化するんですって」
「それはまた大変だな。僕らも大変だった」
「でも、幸せになってほしいですわねえ」

 それまでにひどい遭うのは彼らのほうだから、まあ多少の無礼は見逃してやろう。
 そう思いながらクロードは新作ヒーローが作ったというクッキーを取った。



~終~

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#悪ラス #やり竜
2019年プライベッター初出
「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」×「やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中」
年末年始特別クロスオーバーSS その5(完結)

小説

『悪役令嬢なので竜帝陛下が誘拐中(4)』



「ところでどうしてこの組み合わせなんだ?」

 廊下をてくてく歩きがてら尋ねたクロードに、ジルがああと声をあげた。

「わたしはなんとなくわかります。まず、わたしが奥様をさらうとしますよね」
「君がアイリーンをさらうのか? アイリーンが君をさらうんじゃなく?」
「わたしが、でしょう。そのほうが絵になります! 奥様、美人でしたし!」
「確かに僕の妻は美人だが……」

 そういうジルはどこからどう見ても幼く可愛い女の子である。さきほど扉を拳で叩き壊したことを考慮すると言っていることはわかるが、それでも頷いていいのか微妙なところだ。

「そうすると陛下とクロード様が力ずくでくるのでイベントになりませんよね」
「なるほど、戦力的な問題か」
「そうです。わたしとしては魔王と竜帝をいっぺんに相手にできるなんてまたとない機会、訓練をかねてぜひやってみたいですが」
「よしわかった、それは却下でいい」

 本気で襲いかかってくる幼女を想像して、すぐさま打ち消した。

「では逆に、陛下とクロード様がさらわれるとします。どっちがどっちをさらうのかわかりませんが、多分クロード様が魔王なので陛下をさらうと思うんですけど」
「まあ、そうだな」
「その場合もわたしは陛下誘拐時の訓練とみなして本気で魔王に挑むことになり」
「わかった、それも却下だ」

 二度目の本気で襲いかかってくる幼女を想像して、やっぱり打ち消した。

「他にも夫婦で組み合わせると、どちらの立場でも緊張感にかけます。となると次は今と逆、わたしがクロード様にさらわれれることになると思います。逆でもいいですが」
「いや、僕がさらうことにしよう」

 でないと三度目の本気の幼女が妻と竜帝に襲いかかることになる。竜帝はどうなってもいいが、妻が立ち向かう姿を想像するとクロードも頭が痛い。

「では、わたしがクロード様にさらわれたと想定します。それだと陛下、張り切ると思うんですよね、無駄に」
「アイリーンも無駄に張り切るだろうな……収拾がつかないわけか」
「そうなると思います。あと状況も今の組み合わせがいちばん、話が進みやすいんです」

 アイリーンがさらわれば当然クロードは助けにいく。
 ジルは馬鹿なことをしでかす夫を止めにいく。

「なるほど……だが、竜帝が僕をさらった場合はどうなるんだ」
「それは絶対にクロード様はヒロインではないというメタ的な何かで絶許だとうかがいました。それだけが唯一守ってきた砦だとか」
「そういえば僕は敵に誘拐だけはされてないな……でも竜帝はいいのか、さらわれて?」
「陛下はいつかそのうち絶対にさらわれますので、予行演習かと」
「確定なのか」
「確定です」

 力強く頷き返された。そこに迷いはない。

「そうなると、この組み合わせの場合、最後はどうなるんだ? 僕が竜帝と戦うんだろうか」
「クロード様はアイリーン様の安全を確保なさってください。陛下はわたしが止めます」

 ばきばき指が鳴る音にクロードは気づかないふりをして、ようやく見えてきた三つ目の扉を見あげる。
 また魔力で書かれた文字だ。だが今度は見知らぬ筆跡だった。

「これが最後か。今度こそまともならいいが」
「えーっと。『クイズ! 正解すれば扉は開きます』――まともですね?」
「問題もまあ、まともだ。『クッキーを作ったとき、しっかりした歯ごたえのものができるのはどっち? 1.薄力粉 2.強力粉』」
「絶対、陛下ですね出題者。クロード様、答えはわかりますか?」
「わからないな、僕は。君は?」
「申し訳ありません、わたしもちょっと……」

 いきなり困ってしまった。だが正解は二分の一である。

「とりあえずどっちか選べばいいんじゃないのか? 間違った場合はどうなるんだ」
「あ、はい。注意書きがありますね……『作者権限で正解する以外に扉を開ける方法は皆無。何度も挑戦可能。ただし不正解のたびに魔王は一枚ずつ脱ぐこと』」
「なぜそんな仕様にした!?」

 叫んだクロードに答える声は当然、ない。
 


 その頃の悪役竜帝と悪役令嬢は。

「なるほど、そちらには色んなことがあったんだな……」
「ええ、ええ、そうですの。おわかりになられる? 詳しくはこのコミックと原作書籍をお読みになって、予習なさるとよろしいわ。何かのお役に立つかもしれません」
「読ませていただこう。お礼と言ってはなんだが、こちらのほうもURL(https://ncode.syosetu.com/n6484fv/)だけでも」
「大丈夫です、わたくし存じあげておりますわ。連載追いかけてましたもの!」
「そうなのか。僕は君達が連載してるころまだ産まれてなくて……ただ君達のすごさはいやというほど知っている」
「あら、どのように?」
「作者が連載中の僕らのPVと連載が終わっている君達のPVを見比べて『ジャンル別とはいえ日間ランキングにのってるのにラスボスのほうがPVが上ってどういう……?』と頭を抱えていた」
「でも、ポイントの追い上げ方はそちらのほうがすさまじいですわ。わたくし達が5万ポイントこえた頃ってもう書籍化したあとだったと思いますわよ」

 などと、ダイマをかねたなろう分析お茶会をしながらこの状況を忘れ始めていた。

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#悪ラス #やり竜
2019年プライベッター初出
「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」×「やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中」
年末年始特別クロスオーバーSS その4

小説


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