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【リングフィットをやる魔王夫妻】



「竜帝夫妻に負けませんわよ、クロード様!」
「ジル嬢がいる時点であちらの圧勝だろう」
「あら、クロード様がリングコンを持った時点でこちらの勝ちです」
「は?」
「さらに運動用のぴちぴちな衣装を着せたら完勝ですわ、おほほほ」
「勝敗の基準がおかしい」


「では早速ゲームを開始…」
「待て。その前に君の服を買いに行こう」
「え? わたくしは別にこれで」
「だめだ。ぴちぴちのやつだ」
「真顔で言いましたわね。でも早くプレイしないと出遅れてしまいます」
「あとはスポーツ用ドリンクも必要だ。準備は大切だろう」
「クロード様、本当に形から入るのがお好きですわね……」


「だいぶ遅れをとった気がしますが始めましょう!」
「大丈夫だ、どうせあちらはジル嬢が色々やって進んでない」
「まずストレッチですわ!」
「怪我の防止だな」
「このゲーム、ストレッチも入ってるんですって。本格的ですわね」
「だがこれだけでは足りない。ふたりでストレッチを加えよう」
「クロード様、実はやる気ありませんわね?」
「入念にストレッチしたいだけだ」


「や、やっとプレイ画面…ここから追い上げます!」
「無理では?」
「誰のせいだと!?」
「だが僕は敵情視察用に竜帝のプレイ動画配信を見つけたぞ」
「あら。あちらはどこまで進…」
『陛下かっこいい!』『えっそうかな~』
「「……」」
「頑張りましょうクロード様。いらっとしました」
「同感だ」


「け、結構きついんですけれども…っ」
「僕に合わせて無茶をするからだ。水を飲んで」
「は、はい。…クロード様は汗ひとつかきませんわね」
「いや疲れている」
「その顔で……?」
「顔と関係ないだろう」
「こうなったらクロード様が汗を滴らせるまで頑張ります!」
「なら僕は君が子鹿のように立てなくなるまで頑張ろう」
「またよからぬことをたくらんでますわね!?」
「どちらがだ」



「このゲームの魔物達は可愛いな」
「そ、そうです、わね…回復されたり馬鹿にされたりしますが…あとステッ●とかいう魔物の顔が憎たらしい…!」
「しかしドラ●という奴は、こんなに魔物達が倒されているのに助けにこないとは魔王失格だ」
「えっ魔王なんですの、ドラ●?」
「違うのか」
「違う…と思いますけれど」
「そうか…なら僕がクリアして魔王にならねば」
「それも違いません!?」


「僕のプランクが…間違っている…と…?」
「ク、クロード様! 落ち着いて、これは感知的な問題が」
「そんな馬鹿な…僕が感知されない…」
「いえ、完璧なプランクでした! 間違っているのはコントローラーのほうです!」
「…そうか?」
「そうです。ほらわたくしも感知されな――あっ」
「…されたな、一発で」
「こ、これは運よくで」
「僕はプランク魔王になる。プランクを完璧にできるようになるまでやり続ける」
「バランス良く運動しましょう!?」


「無事か、アイリーン」
「だ、大丈夫ですわこれしきの筋肉痛ッ…!」
「僕に負荷を合わせて無茶をするから…何かほしいものは? コンビニで買ってこよう」
「クロード様がコンビニ!?」
「僕だってコンビニくらいは行ける」
「本気で仰ってますの…!?」
「…そういうことを言うなら、君をお姫様抱っこで連れて行く」
「それはちょっ…クロード様待って、わたくしが悪かったですから!」


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#悪ラス
2021年Twitter初出

小説

【リングフィットをやる竜帝夫妻】



「なんなの突然」
「魔王ご夫妻もやるんですよ、負けられません!」
「なんでまた」
「以前3日坊主で投げた作者が今回こそクリアすると頑張っていたところ23面まであると知ってネタにでもしてないとやってられないと企画したそうです」
「私情にもほどがない?」


「このドラ●って奴が悪者ですね!」
「そうかな~味方面してるリン●のほうがあやしいよ」
「え…」
「僕らを利用してるんだ…信用できない」
「陛下…任●堂様はそんなひどいゲーム作りませんよ」
「君はヨッ●ーを乗り捨てたことがないって言うの!?」
「それはプレイヤーが」
「僕は悪くない!」


「右! 左! みぎ! ひだり!」
「ジル…さっきからモモアゲアゲにその動き何」
「はい、蹴りを加えてます!」
「なんでアレンジするの!?」
「いいから陛下も一緒に、右! 左! とりゃ! そりゃ! 蹴り上げ! 回し蹴り! あれっ感知しない…」
「ちゃんとミ○リさんの言うこときいてあげて」


「リングアロー、姿勢がよくわかんないんだよね」
「狩りで弓を使う感じでやったらどうですか?」
「んーこう?」
「陛下かっこいい!」
「えっそうかな~」
「もう一回やってください!」
「え~」
「かっこいい~~!」
「ええぇ~~?」
「わたしの陛下がかっこいい~~!」
「そ、そうかな~~!?」


「陛下~このレモンの蜂蜜漬けおいしいです~!」
「摘まみ食いしない。水分とタオルはここに置いておくよ」
「はい! 今日もプレイしましょう!」
「待って、お風呂も焚いておくから。終わったら入って。服は全部洗濯ね」
「わたし、陛下と結婚してよかった~」
「そ、そんなこと言ったって…プロテイン入りの牛乳くらいしか用意しないから!」
「陛下大好き~~~~!」


「あー負けちゃいました! スムージー使えばよかったかな…」
「ボス戦以外は節約したほうがいいよ。敵の弱点とか攻撃範囲考えてスキルセットするほうが先」
「むー。でも、現実のわたしは負けてないですよ!」
「うん、でも画面の中のキャラが負けてるからね」
「ボスのドラ●だって、画面の中から出てきてくれればわたし、勝てると思うんですよ!」
「ゲームと現実の区別はつけようね」


「陛下~~プランク、姿勢を感知しません!」
「あー感知されるまでに体力使っちゃうよね」
「ちゃんとやってるのに…」
「そういうときは、太股のを外して、床に水平にするんだよ。はい、感知した」
「ずるでは…?」
「そんなことないよ。付け直して運動するんだし」
「え~でも…」
「そもそも僕のプランクを感知しないとか許されるわけないから…」
「ちゃ、ちゃんとやることが大事ですよね!」


「今日はお休みだから買い出しいくよ~ジル」
「はーい。わたしパフェ食べたいです」
「だめ。運動用のウェアいくつか買おう。帰ったら洗濯終わってるから、一緒に干そうね」
「はい! 陛下にまかせてたらばっちりですね」
「ほめてもパフェはだめ」
「甘いものは疲労回復にいいですよ。わたし、陛下と巨大パフェはんぶんこしたいな~」
「そ、そんなふうに言ってもだめ!」
「あーんってしたいな~」
「え…そ、そんなに~!?」
「したいな~あーん」
「な、なら…しょうがないかなっ」
「やったー!」


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#やり竜
2021年Twitter初出

小説

『ポンパ巻き貝ハーフアップ梅雨の戦い・後編』



 寝室の扉が開く音に咳払いをして、アイリーンは振り向く。

「おかえりなさいませ、クロードさ……」

 咄嗟に口元を両手でふさいで噴き出さなかった自分をほめたい。
 だがそのまま震えてしまうのは押さえられなかった。
 昼間、アイリーンが巻き貝にした頭にさらに鳥籠を盛って現れたときから覚悟はできていた――クロードの髪型がそう、庭になるくらいは。
 だが、現実は常に厳しい。

「な、なん、ですの、その髪型」
「宮殿だそうだ」

 では、横髪を持ちあげて上でくくり、花で飾っているのは門。その奥、鳥籠をうまく柱にして、髪や飾りを盛って作られているのは宮殿か。

「お、重たくありませんか」
「重たい」
「湯浴みは」
「これからだ――で、はずしていいだろうか?」

 クロードが頭の上を指でさして、首をかしげる。それだけでもうだめだった。寝台に突っ伏したアイリーンは全身を震わせて笑う。

「機嫌が直ったなら何よりだ」
「む、むしろクロード様、よく一日耐えて……ああ、お待ちくださいな。無理に引っ張ったら髪が傷みます」

 寝台に腰かけたクロードのうしろに回り、アイリーンはそっとクロードの髪を留めているピンを抜いていく。
 はらりと一房、黒い艶やかな髪が落ちた。

「……」

 しばっている髪をほどくとまたさらりと髪が流れ落ちる。

「……」

 花飾りを引き抜くと、さらっと前に髪が流れていった。
 だんだん半眼になってきたアイリーンは無言で最後、鳥籠を取りあげた。
 さらりと背中にしなやかに黒髪が落ちる。

「ありがとう。……アイリーン?」
「どうして癖のひとつもついてませんの!?」

 叫んだアイリーンはクロードのうしろ髪を握る。だがさらさらだし、つやつやしているし、あれだけ塗りたくった薬も何もなかったかのように輝いている。

「許せませんわ、どういうことですか!?」
「そんなことを言われてもな」
「何が違うんです!? 実は形状記憶合金!? それとも髪の手入れ!? 何を使っておられましたクロード様!?」
「特に変わったことはしていないと思うが……」
「ないなんて言わないでください! 絶対! 何かあります! あると言ってください……!」

 両手で顔を覆って懇願するアイリーンに少し考えこんだクロードは、自分の髪を見て、それからちょっと首をかしげる。

「じゃあ、確かめてみたらどうだ」
「何をです!? クロード様の天賦の才能をですか!」
「湯浴みを」

 にっこりと笑われて、アイリーンはそのまま固まった。





「――で、今日はご機嫌なんですね? 晴れるくらいには」
「そうだな。あんなわけのわからない髪型をしただけの対価は得たからな、湯船で」

 朝の珈琲を飲みながら、ゆっくり従者と語り合う。ちなみに愛らしい妻は未だ寝室だ。多分、昼まで起き上がれないだろう。

「本当に僕の妻は、いつも努力を斜め上に走らせるから可愛い」
「では、今日は私めが支度してもよろしいので?」
「ああ。寝室からこちらを恨みがましくのぞき見しているアイリーンには気づかないふりをしてくれ」
「あ、あれやっぱりのぞいてらっしゃるんですね……どうしてまた」 
「夜会でお前が僕の髪をいじると毛先が曲がるだろう。何をしているのかと」
「なるほど」

 櫛やら何やら取り出してきたキースは眼鏡を押し上げて、にっこり笑った。

「それは秘密ですね」
「だろうな」
 

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#悪ラス
2020年Twitter初出

小説

『ポンパ巻き貝ハーフアップ梅雨の戦い・前編』



 魔王様のご機嫌に関係なく、雨が降る季節になった。
 鏡台の前に櫛を置いて、アイリーンは嘆息する。するとソファに座り、執務前の休憩、食後の珈琲を飲んでいたクロードがまばたいた。

「どうした、アイリーン。何か気鬱なことでも?」
「いえ、髪が……こう、なんていえばよろしいのか……ぼわっとしてしまうのが気になって気になって」

 レイチェルたち侍女達とも毎朝悪戦苦闘するのだが、どうしても今時期は湿気で髪が膨らみがちだ。

「結んでしまえばいいんですけれども……」

 髪先をいじりながら、アイリーンは嘆息する。立ちあがったクロードがわざわざ背後から小首を傾げて覗きこんできた。さらりと湿気も何も関係ない、艶やかな髪が目の前に流れる。

「髪型のひとつやふたつ気にせずとも、君はいつも可愛い」

 甘くささやく夫に、アイリーンは笑顔を返す。

「クロード様に言われると腹が立つので控えていただけますか」
「……手厳しいな」
「こんなつやつやの髪をなさって、そんなことをおっしゃるからです。どれだけわたくしが苦労してると思いますの」

 ぐいぐいと遠慮なくクロードの髪をひっぱると、クロードが顔をしかめた。

「わかった、配慮に欠ける発言だった」
「認められても腹が立ちますわね」
「どうしろと」
「どうもこうもありません」

 羨んだところでクロードの雨にも風にも湿気にも負けない髪が手に入るわけではない――と言おうとして、アイリーンは口をつぐむ。
 いいことを思いついた。



「……なんなんですか、我が主。その髪型」
「よくわからないが今日一日この髪型でいろと言われた」

 頭の上に巻き貝のようにねじり上げて作られた髪型が重い。ぐるぐる渦をまいた髪の間に花飾りまで散りばめられて、なんだか肩が凝る。

「髪が爆発する苦労を知れと言われた」
「なんかそれ、違いません?」
「僕もそう思うんだが、妻がご機嫌になったのでまあいいかと」

 キースが呆れて雨の降る窓の外を見る。

「今日も平和でいいですねえ」
「まったくだ」


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#悪ラス
2020年Twitter初出

小説

7部、ラストあたりの執筆BGM。



テンション上げるために選んだんですが、ラスボス戦みたいになってしまった。
ラブコメです(思い出したように)

#やり竜

小ネタ



竜ときょうだいと戦争はファイアーエムブレムのお家芸!(たぶん)


FEシリーズは聖戦の系譜が親なのできょうだいで殺し合うとかそういうの出てくるとうあああってなってしまう。
セリス×ユリアだった子どもの私が負った心の傷の話、します?
っていうか聖戦の系譜には性癖歪められた気がします。シグルドが過去話をぴよぴよ神竜くんに語ろうとするたびに「君の話は刺激が強すぎるからやめようか!」と止めてしまう。

すべてどこかで見た(失礼)エンゲージに後半でこうも萌えるとは!
でもリュール君はどうなってしまったんだ…?と首を傾げたりしない、考えるな感じろ。


IMG_2585.jpeg

でもそうも言ってられないかもしれない。
戦闘システムに設定盛り込んできやがった。そういうの大好きだけど、つまりどういうことなの?
リュールくんは生きてるの死んでるの?人間では元々ないからなんでもいいのか?

IMG_2586.jpeg

しかもビームが撃てるようになって…???

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考えるな感じろ、ファイアーエムブレムエンゲージ!!

『魔王と竜帝でチョコを作れと言われたので』



「クロスオーバーはこの間限りじゃなかったのか」
「今度はバレンタイン企画だそうだよ。僕と君で一緒にバレンタインのチョコを作ってみてほしいってリクエストがあったらしい」

 三角巾にきっちり髪を入れてまとめ、エプロンをつけて、ロリコンもといハディスが答える。

「君は作ったことないだろう、チョコ。だから僕が君に作り方を教えるよ」

 従者に三角巾とエプロンをつけられ髪もひとまとめにさせられて、突然厨房に放りこまれたクロードは、眉をひそめた。

「君が、僕に?」
「大丈夫だ、そんな顔しなくても。ジルが僕に頑張ってって言ってくれたから、ちゃんと食べられるものを教えるよ。それに、僕、嬉しいんだ」
「嬉しい?」
「こんなふうに誰かと一緒に作るなんて、友達みたいじゃないか」

 にこにこするハディスに、クロードは胡乱な眼差しを向ける。
 魔王の自分が言えた義理ではないが、すさまじく胡散臭い。

(バアルと作るほうがまだマシだ)

 とついうっかり思ってしまったのも悔しいので、そうかと頷くだけにとどめる。

「まあ、頼む。アイリーンに変なものを食べさせるわけにはいかない」
「うん、まかせてくれ。ということで、君の材料はこれ」

 そっとハディスが床から木箱を取り出した。中から出てきたのは包装されたチョコレートだった。板チョコだ。
 焦げ茶の包装紙部分には『m●iji』と書いてある。

「……」
「適当なサイズに折って、ボウルに入れて、違うボウルに熱湯を入れて、そこにチョコの入ったボウルを浮かせて、油と分離しないようゆっくりとかして、それをそこにある好きな型に入れて、冷蔵庫に冷やしておわり。食べられるものはできる」
「…………」
「最終手段としては、これをラッピングし直して渡せばいいと思う。じゃあ頑張って」
「実は教える気がまったくないな?」

 真顔で問うと、ふとハディスが目元を緩めた。

「僕、こういう台詞を他人に言える日がくると思ってなかったんだけど――君は顔がいいんだからチョコなんかどうでもよくない?」

 ハディスの得体の知れない笑みにつられたように、クロードの口角もあがる。

「言われ慣れた台詞だが、君に言われるとすさまじく腹が立つな。なんというか、お前が言えたことかという気分になった」
「僕には君ほどの卑猥さはないと思う」

 どこかで派手に雷が落ちたが、ハディスは気にする素振りもなくにこにこ笑ったままだ。
 この男、絶対ろくでもない。
 確信したクロードは、できるだけさわやかに問いかけた。

「ならあれか。君は可愛い系でも狙ってるのか、その全力で胡散臭い笑顔で」
「心外だな。僕はただのイケメンだよ」
「さすが、通報皇帝だの嫁だの中身が幼女だの言われているキャラは言うことが違うな」
「ははは、ヒロイン扱いされてヒーローに戻れない君からの忠告、痛み入るよ。サービスショットを求められて大変だね」
「三分クッ●ングのシルエットをつけたら笑いを取れそうな君には負ける」
「そんな話聞いてないよ、やる予定がどこに!?」
「そして最終的には必ず君も全裸にさせられるんだ……! 僕なんてコミカライズでも全裸になったんだぞ!」
「――この話、やめないか?」

 眉をひそめたハディスに、クロードも遠い目になる。

「そうだな」
「真面目な話、君はほとんど料理をしたことがないんだろう。なら、市販のチョコを湯煎して溶かすだけでも立派な手作りだ。テンパリングだって初めてだろう? 大半の女の子の手作りだって、市販のチョコを使ってアレンジしてるんだし」

 その言葉に嘘はなさそうだったので、クロードは『m●iji』と書かれた板チョコを手に取って嘆息する。

「まあ、それもそうか。じゃあ君も使うのか、これ?」
「僕はカカオから作るよ? お嫁さんにあげるんだぞ。手抜きなんてできない」
「……」
「再来年くらいは僕が栽培したカカオ豆で作ったチョコをジルにあげたい」

 それはさすがにちょっと引くと思ったが、ハディスは真剣である。
 馬鹿にするにも、ハディスは一回り近く年下なのだ。邪魔するのも大人げないと、クロードは引き下がることにした。

「わかった。頑張るといい。僕とアイリーンはもう身も心も夫婦だ。続編でまた引っかき回されるだろう君達と違って平和な未来しかない」
「なんだ君、知らないのか」
「何をだ?」
「ちょうど今、作者がとりあえずプロットとかいうのを作ろうとして」

 なんのなどと愚問は聞かずに、クロードは転移した。



 熱湯をぶっかけられてチョコ水と化したものを見せられて、アイリーンは方針転換を決意した。

「ジル様。うちのオベロン商会からバレンタイン商品は多数出ておりますわ。そこで選びましょう!」
「やっぱりそうなりますよね……」
「手作りじゃないの?なんていう男性などぶん殴って更生すべきです!」
「でも陛下は本気の手作りを持ってくるから、少しくらいわたしも……」
「なら余計、うちの商品を召し上がっていただくのはいい案ですわよ。ぜひハディス様のご意見も伺いたいですし、ハディス様の今後のお菓子作りも役立てると思いますの!」
「た、確かに。陛下も喜びそう……」
「アイリーン!!」

 突如としてわって入った夫の声に、アイリーンは目をまばたく。
 本日はバレンタイン企画。メインはヒーローふたりのチョコ作りである。その裏で、アイリーンはバレンタインくらいハディスにチョコを贈りたい、というジルの相談にのっていたのだが。

「どうなさいましたの、クロード様」
「ひょっとして陛下に何かありましたか!?」
「いや違う。違うんだが、逃げようアイリーン」
「はい?」

 首をかしげている間に横に抱きあげられた。ジルの前だ。少女のきょとんとした眼差しがいたたまれず、アイリーンは赤くなる。

「ちょっとクロード様! ジル様の前で、はしたない」
「ついうっかりクロスオーバーとか言って、現在進行形で本編があるところと関わったのが間違いだった」
「いったいなんの話ですの。落ち着いて説明してくださいな」
「作者がプロットを作ろうとしているらしい」
「逃げましょう!」

 なんのかを聞きたくないアイリーンは即断する。

「ジル様、失礼致しますわね! どうかお幸せに!」
「えっあ、はい……?」
「バレンタインのチョコは買ったほうがよろしいですわよ!」

 その忠告だけは忘れずに届ける。頷いたジルにほっとして、アイリーンは夫の転移に身を任せた。



 なんだったんだろう。首をかしげたジルの背後から、影が差す。

「陛下!」
「あっちは帰ったのか?」
「みたいです。なんだったんでしょう……?」
「続編が嫌なんじゃないか」

 そういうものか。曖昧に頷いたジルを、ハディスが片腕で抱きあげる。

「君は嫌じゃないのか?」
「嫌じゃないですよ。わたしは陛下をいっぱいしあわせにしなきゃいけないんですから!」

 胸をはったジルはたくましいお嫁さんだ。

(だがあの嫌がりよう。相当面倒なことばかりこなしてきたんだろうな……)

 そう思うと先が思いやられる。だがハディスは微笑んだ。

「じゃあ僕は頑張って君にチョコレートを作らないとな」

 ぱっと顔を輝かせたジルが成長するのにも、続編がいる。
 なのでハディスは立ち向かうしかないのだ。


(終)

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#悪ラス #やり竜
2020年プライベッター初出
バレンタイン企画クロスオーバーSS

小説

『魔王様は魔道士を待っている』



 キースとレイチェルに案内された廊下の光景に、アイリーンは頬を引きつらせた。

「……何をなさってますの」
「エレファスの帰りを待っている」

 古城にあるエレファスの私室の扉前に魔王が三角座りをしている。その両隣に、護衛のウォルトとカイルまで同じ格好で座っていた。

「今日で休暇終わりなのに、あいつまだ帰ってこないとか! そんなに嫁さんがいいか、そうか! あーうらやましい!」
「ひどい裏切りだ。僕が待ってるのに、許せない」
「クロード様はともかく、お前のはひがみだろうが、ウォルト……」
「と言いながらあなたまで座りこんでいるのはどういうことなの、カイル」
「全員、エレファスさんが戻ってこなかったらどうしようって不安なんですよ」

 キースだけが冷静にアイリーンに向けて説明する。

「こーなったら明日の朝、あいつの出勤時間までここで座って待ちましょうねクロード様!」
「そうだな。思い知らせてやる。僕がこんなに寒い思いをして廊下で待ってるんだと」
「それはさすがに……きっともうすぐ戻ってくる……」
「はーー? 今、もう夜中ですけどおぉ?? 戻ってくるわけねーだろ今頃嫁さんといちゃいちゃしてんだ、朝に戻ってくるつもりだぞ転移できるからって! あー!」

 ウォルトが投げ出した両脚をばたばたさせる。クロードが赤い瞳を細めた。

「僕より妻がいいなんて、エレファスは浮気者だ」
「あー男の友情とかはかなーーい」
「仕事だ、戻ってくる。あいつは真面目な……いや裏切りが十八番だが」
「我が主。あなたの愛する奥様が迎えにきてるんですよ、寝室で休んでください」

 嘆息と一緒にクロードの前でキースが仁王立ちした。

「アイリーン様が迎えにきたらちゃんと寝るって私めと約束しましたね?」

 ここに案内された理由がわかった。ちらとアイリーンを見たクロードは恨みがましく言う。

「僕の妻は、聖王と正妃の仲裁で、今夜はまた戻らないと聞いたが」
「ええ。ですので私めが頭をさげてお連れしたんですよ」
「お前が呼ぶときてくれるのはどういうことだ?」
「日頃の行いです。変なからみ方しないでくださいよ」
「寝室に戻ったって、またアイリーンは出て行くんだろう」
「それは主の態度次第ですよ」
「エレファスも戻ってきてくれないかもしれない」

 そこで妻である自分とエレファスが並ぶのはどういうことだ。――と思ったが、エレファスの休暇中、ずっとそわそわしていたことを思うと怒れなかった。
 エレファスは故郷のためにクロードにつかえたのだ。その意味をちゃんとクロードは理解している。故郷のためなら平気で裏切るエレファスごと、受け入れている。

「ゼームスだって、遠くに行ってしまう」

 完全に思考が落下方向にあるらしく、どんどんクロードが沈んでいく。
 キースが眉をよせて、大きな息を吐き出した。

「わかりました、わーかーりーまーしーたー! エレファスさんとゼームスさんが主を裏切るような真似をしたら、私めがきちんとレヴィ一族とミルチェッタ公国を滅ぼす手配をしますので、元気を出してくださいクロード様」
「わかった、それならいい」
「ちょっそんな約束、安易になさらないでくださいませ!」

 キースが約束してクロードが了承すると冗談にならない。
 中腰になったクロードが、アイリーンが思わずあげた声に振り向いた。

「大丈夫だ」
「なんに対しての大丈夫ですの、それは」
「君に心配をかけることはない、ということだ。女子会とやらに戻るといい。ウォルト、カイル。お前達ももう休むように」

 はぁい、と雑な返事でウォルトが立ちあがり、嘆息と一緒にカイルもそれに続く。

「古城で休まれますか、我が主。それとも皇城で?」
「そうだな……」
「アイリーン様。おわかりですよね?」

 背後からレイチェルにささやかれた。振り向かなくても、優秀な侍女の圧はここまで届く。
 わかっているとばかりに、アイリーンはわざとらしく咳払いをした。

「わ、わかっているわ。ロクサネ様はバアル様とお話したほうがいいでしょうし。あとはまかせていいわね、レイチェル?」
「もちろんです、そのように」
「クロード様。古城でお休みしましょう。わたくしも参りますわ」

 ぱちりとまばたいたクロードに、やや目線をそむけながらアイリーンは続ける。

「しかたがないから、慰めてさしあげます。……さみしがり屋なんですから、クロード様は」
「……そうか」

 ふわっとクロードが嬉しそうに笑う。
 ああ、この人は本当に表情が豊かになってきた。
 きっとアイリーンひとりだけでは成し遂げられなかったことなのだろう。でも、悔しくは思うまい。

「不思議だな。君がそばにいるとさみしくない」
「当然でしょう。わたくし、あなたの妻ですもの。エレファスと一緒にしてもらっては困りますわ」

 ふんとそっぽを向くと、クロードが甘えるように腰に手を回してきた。

「それは、失礼した。ご機嫌をとらなくてはならないな」
「えっ……」
「実はがっついていると言われて、とても傷ついていたんだ」

 慰めてくれるだろう?
 そうにっこり笑ったクロードの腕からの逃亡は、妻として許されない。




「……で? なんで休暇明けの俺の仕事が、寝室の扉をあけることなんです!?」
「お前のせいだからだよ」
「部屋の前で一夜をあかさずにすんだのはアイリの……皇后陛下の犠牲のおかげだ」
「というわけではい、頑張ってくださいねエレファスさん」

 ウォルトとカイル、とどめにキースにまで見捨てられたエレファスは、皇帝夫妻の寝室前で呆然とする。
 固くクロードの魔力で閉ざされたこの扉をあけるとか、休暇明け早々なんの嫌がらせだ。
 レイチェルまでキース達と一緒にうしろにさがって、完全に見守る体勢だ。

(ええー……いや、こっちに戻ったら三角座りのクロード様が俺の部屋の前にいるとか恐怖だけど)

 ちらと見た窓の外は快晴。魔王様は本日もご機嫌だ。昨夜は吹雪だったそうだが。 

「あー……クロード様、ただいま戻りました。エレファスです」
「……」

 扉の向こうの沈黙が、なんだか冷たい。
 嘆息したエレファスは、苦笑いで話を続ける。自分でつかえると決めた、主に。

「今日からまたこちらで暮らします。週末は、故郷に戻りますが。宜しくお願いします」
「……」
「国も、家族もいただきました。だから俺はあなたに尽くしますよ。まあキース様ほどは無理ですが!」
「名指ししないでもらえます?」
「ネイファさん……妻も、了承済みです。むしろそれでいいと。その証、というほどではないですが。妻からこれをクロード様にと渡されました」

 そっとエレファスはネイファに持たされたお土産を袋から出す。
 賄賂だ、さすが世渡り魔道士、などという単語が背後で聞こえたが、気にしない。

「試作品だそうです。手で持てる小型の写真機だそうで、アイリーン様の写真が撮れますよ」

 ばあん、と派手な音を立てて扉が開いた。成功だ。
 エレファスの背後で拍手が鳴った。

 その後、ご機嫌で小型の写真機を持って皇城をうろつきまわる皇帝の姿が散見されたエルメイア皇国は、今のところ平和である。

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#悪ラス
2020年プライベッター初出
『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』既刊重版御礼小説

小説

このサイト、Wikipediaに勝った(「永瀬さらさ」で検索かけるとwikiより上に表示される)ようです。
おめでとうおめでとう、ありがとう!!
自分が管理するようになって追い抜かれないようにしなきゃ…。

#codeAlice

制作メモ



『やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中・7部マジカルテロ4/26から連載開始予定です。


副題(?)どおり、マジカル☆な感じの可愛いラブコメに仕上がりました。安心安全にお楽しみ頂けます。
たとえ担当さんが「そろそろかっこいいジルの表紙に……」とか言い出しても私はラブコメを諦めない。
しいてラブコメとしてどうかと思う点をあげるなら、もう序盤からずーーーーっとジルが戦ってることですかね……。執筆中は頭抱えすぎて記憶が曖昧ですけれど、「ここから敵が入れる保険はありませんか……」とか言ってました。マジカルで解決した。竜帝夫婦、強さのインフレバトルに突入しつつある。
なお、この間「やり竜、ハッピーエンドだと思ってたけど違うのでは?」と突然気づいたときから、ラーヴェ様が今から入れる保険を一応探してるけど、見つかりません。

でもハディスとジルが結婚していずれ子だくさんになればハッピーエンドって読者さんが言ったのでやり竜はハッピーエンドです。

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#やり竜

制作メモ


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